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製造業・工場のDXに外部人材を入れる|現場主導の進め方と、役割・稼働率の決め方

執筆澤 万純Activated Trigger株式会社 代表取締役
製造業・工場のDXに外部人材を入れる|現場主導の進め方と、役割・稼働率の決め方

製造業・工場のDXに外部人材を入れる|現場主導の進め方と、役割・稼働率の決め方

工場のDXは、本社の企画部門だけでは進みません。設備、作業の手順、紙の帳票、現場で長年使われてきた表計算など、現場に行かないと分からない事情が多いためです。

この記事では、製造業の企業が工場のDXを進めるときの体制、公式に発表されている企業の事例、現場で使われているツール、外部の人材に任せる役割と稼働率の決め方を整理します。AXの全体の手順は、AXの進め方にまとめました。

製造業のDXで足りていないのは、現場とデジタルの両方が分かる人

IPA(情報処理推進機構)が2026年7月に公表した調査は、国内1,799社の回答をまとめています(全業種の合計)。

  • DXを進める人材の量について、「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業は合わせて85.5%でした。
  • AIの導入は、従業員1,001人以上の企業で8割近く、101人以下の企業で16.6%でした。
  • AIの用途は「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%です。「生産・物流・サービス提供の計画支援」は6.0%でした。
  • 不足が大きいAI関連の人材として、現場の知見と基礎的なAIの知識を持ち、自社へのAI導入を進められる従業員が挙げられています。

AIは事務の用途での利用が先行しています。生産や物流に関わる用途での活用は、相対的に限られています。足りていないのは、現場の業務とデジタルの両方が分かる人です。

人手の面でも余裕はありません。「2026年版ものづくり白書」(2026年5月29日公表)によると、製造業の就業者数は2025年に1,033万人で、前年の1,046万人から減りました。人材育成の問題として「指導する人材が不足している」と答えた製造業の事業所は6割を超えています。

現場主導で進めた企業の公式発表

成果を公表している製造業には、共通点があります。現場の社員が自分で業務アプリを作る仕組みと、支える推進組織の両方を持っていることです。

LIXIL

2021年に、プログラムを書かずにアプリを作れるツールを社内に公開しました。公式サイトによると、2026年3月期までに業務アプリ5,074件が開発され、開発した社員は12,227人、利用対象者の39.1%にのぼります。

トヨタ自動車 田原工場

現場の担当者がMicrosoft Power Platformでアプリを自作しています。日本マイクロソフトの発表によると、保全作業を管理するアプリで作業1件あたり9分を短縮し、エンジン製造部の5つの課で月約475時間を削減しました。推進部門の担当者が立ち上げた社内のコミュニティが、現場の開発者を支えています。

花王

SCM部門がPower Platformの活用を進めました。日本マイクロソフトの発表によると、国内10工場で現場の社員が260以上のアプリを開発しました。和歌山工場では、300種類以上あった在庫管理のカードをデジタル化し、約480時間の作業を効率化しています。

日機装

精密機器の事業で、kintoneの業務アプリをすべて社内で作っています。サイボウズの導入事例によると、事業本部の約200名が関わり、紙の申請手続きをほぼなくして年間約23,000時間を削減しました。現場からは毎年約200件の改善の案が出ています。

SWCC

検査成績書を電子化しました。シムトップスの導入事例によると、転記と集計の作業を月64時間削減し、紙を月6,000枚以上減らしました。DXの推進グループと現場の品質保証の担当が一緒に進め、20以上の部門に広がっています。

旭化成

製造現場の危険予知の活動で、過去の事例を読み込ませた生成AIを使っています。ニュースリリースによると、生成AIの専任組織とスマートファクトリーの推進組織が、現場を技術面で支援しています。

人材の育成に取り組む企業

ダイキン工業は、2017年に社内大学を設立し、毎年100名規模の新入社員を2年間教育しています。2023年度末までに1,500名を育成しました。ヤマハ発動機は、製造現場でデータを扱える人材を「現場サイエンティスト」と呼び、社内の制度で育成しています。

工場のDXの進め方

1. 工場ごとにタスクフォースをつくる

本社のDX推進部門が全体を進め、工場ごとにタスクフォースを置きます。タスクフォースには、製造、品質管理、生産管理、保全の担当者を入れ、工場の中にリーダーを立てます。リーダーは、現場の課題を集め、試した結果を本社に報告します。

上の事例でも、推進組織と現場の担当者が一緒に進めています。本社だけで決めた仕組みは、現場で使われません。

2. 現場の業務を資料にする

BPR(業務改革)と同じ手順で、現状を資料にします。

  • 工程ごとの業務フロー図(誰が、いつ、何を記録し、どこへ渡すか)
  • 帳票の一覧(紙の帳票の種類、記入の頻度、転記先)
  • 作業時間の実測(記録、転記、集計、確認にかかる時間)

IPAは、中小規模の製造業向けに「製造分野DX度チェック」を公開しています。9つの項目を4段階で評価する自己診断で、「外部資源の活用」と「人材の育成・確保」も項目に入っています。推進のステップの例も同じページから入手できます。

IPA「製造分野DX度チェック」の9つの評価項目

出典: IPA DX SQUARE「製造分野DX度チェックとは」の画面の一部を切り抜き(2026年10月11日に取得)

3. 小さく試す

紙の帳票1種類、1つの工程から試します。現場の社員が自分で触れるツールを選ぶと、改善の案が現場から出てくるようになります。

4. ツールと施策を選ぶ

経済産業省とNEDOの「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」(第2版・2025年5月)は、経営と業務の課題を特定するところから始めて、デジタルの解決策を選ぶ手順を示しています。課題を先に決め、ツールを後で選ぶ順番です。

5. 他の工程・他の工場に広げ、効果を測る

1つの工程で効果を確かめてから、他の工程と他の工場に広げます。削減した時間と紙の枚数を、開始前の数字と比べて記録します。

現場で使われている主なツール

事例に出てくるツールを中心に、公式サイトの説明をもとに並べました。

  • kintone(サイボウズ): プログラムを書かずに業務アプリを作る
  • i-Reporter(シムトップス): 現場の紙の帳票を電子化する
  • Microsoft Power Platform(マイクロソフト): アプリの作成、作業の自動化、データの可視化
  • カミナシ レポート(カミナシ): 現場の帳票のデジタル化と、データの集計・分析
  • Platio(アステリア): 業務に合ったモバイルアプリをプログラムを書かずに作る
  • MotionBoard(ウイングアーク1st): データを集めて画面に表示し、分析する

外部の人材に任せる役割

社内に現場とデジタルの両方が分かる人が足りない場合、外部の人材で補います。任せる役割は4つあります。

現場の聞き取りと課題の整理

現場の作業者や班長から話を聞き、業務フロー図と帳票の一覧を作ります。聞き取った内容を、経営層が投資を判断できる形にまとめます。

この役割には、製造の現場の言葉が分かることが欠かせません。品質管理、生産計画、在庫、保全の基礎知識がないと、聞き取りの質問が浅くなります。製造業を担当してきたコンサルタントや、メーカーの生産技術の出身者が向いています。

施策の企画と要件の整理

どの施策から着手するかを決め、必要な機能を要件として書き出します。帳票の電子化、検査記録の入力、在庫や工程の管理システムとのデータ連携が対象になります。IPAの「デジタルスキル標準」(ver.2.0・2026年4月)では、ビジネスアーキテクトと呼ばれる人材の類型が、この役割に近い位置づけです。

現場に入って作る役割(FDE)

FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)は、顧客の現場に入り、課題の整理から仕組みの設計、実装、本番への導入まで一貫して関わる技術者です。

国内の企業も、公式にこの職種を説明しています。LayerXは、顧客との最前線に立ち、顧客の課題を理解して、製品の実装と導入を進めるエンジニアと説明しています。エイシングは、顧客の現場に深く入り込み、課題の整理からAIシステムの設計・実装・本番導入までを一貫して支援するエンジニアと説明しています。

要件の整理と実装を近い距離で進めるため、小さく作って現場で試し、直す、という進め方に向いています。

複数の拠点への展開

1つの工場でうまくいった仕組みを他の工場に広げる段階では、進捗の管理と拠点間の調整を担うPMO(プロジェクトの管理を支援する役割)が必要になります。

依頼の内容の書き方

外部の人材を探すときは、依頼の内容を具体的に書くほど、合う人が見つかりやすくなります。次の項目を書き出してください。

  • 対象の工場と工程(例: 組立工程の検査記録、資材の受け入れ)
  • 今わかっている課題と、まだ分かっていないこと
  • 任せたい範囲(聞き取りだけか、要件の整理までか、実装までか)
  • 使っているシステムやツールの名前
  • 社内のタスクフォースの人数と、関われる時間
  • 現場に行く頻度と場所

「DXを推進できる人」とだけ書いた依頼では、候補者が自分に合う案件かを判断できません。

稼働率の決め方

外部の人材は、週5日の常駐に限りません。段階によって必要な稼働が変わります。

  • 現場の聞き取りと課題の整理(工場訪問、聞き取り、資料の作成): 稼働率 40〜60%
  • 施策の企画と要件の整理(企画書、要件の文書化): 稼働率 20〜40%
  • 実装と現場での試験(仕組みの作成、試験、修正): 稼働率 60〜100%
  • 定着と他拠点への展開(進捗管理、教育、調整): 稼働率 20〜50%

上の数字は一般的な目安です。実際の稼働率は、対象の工程の数と社内の体制で変わります。

企画の段階では、低い稼働率で経験者を迎え、必要なときだけ工場へ出張してもらう形が選択肢になります。

単価の目安

PERSONAに掲載しているDX・デジタル変革の分野の案件は、2026年10月11日時点で220件を募集しています。月額の中央値は165万円、中間帯は150〜185万円です(単価130万円以上の案件で集計)。

報酬が稼働率に比例すると仮定すると、稼働率40%の月額は60〜75万円ほどです。実際の金額は、契約の条件で変わります。分野ごとの最新の数字は、DX・デジタル変革の案件一覧で確認できます。

社内で用意しておくこと

外部の人材が入っても、次の3つが社内にないと進みません。

  • 現場と話を通せる窓口の担当者
  • 施策の優先順位を決められる責任者
  • 外部の人材が抜けた後に運用を引き継ぐ担当者

特に引き継ぎの担当者は、契約の最初に決めてください。作った仕組みの手順書を誰が受け取るかが決まっていないと、契約が終わった後に使われなくなります。事例の企業が現場の社員によるアプリ作りを重視しているのも、運用を社内に残すためです。

地方の中堅・中小企業が外部の人材を探す場合は、内閣府の「プロフェッショナル人材事業」の拠点に無料で相談できます。副業・兼業の人材やフリーランスへの業務委託も対象です。

相談の進め方

必要な役割と稼働率がまだ決まっていない段階でも、相談できます。PERSONAの企業向けの人材紹介では、コンサルティング会社の出身者を中心とした登録者から、条件に合う人材をご紹介します。

人を迎える前に、工場のどの業務から着手するかを決めたい場合は、AI導入効果アセスメントで業務の棚卸しと削減効果の試算ができます。

参考にした公式情報

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この記事の執筆者

澤

澤 万純Activated Trigger株式会社 代表取締役

九州大学 経済学部 経済工学科 卒業後、デロイト トーマツ コンサルティングに入社。大手企業の業務改革・BPR・DX支援に約5年間従事。2019年7月にActivated Trigger株式会社を設立し、代表取締役に就任。フリーコンサル案件紹介プラットフォームPERSONAを企画・開発・運営している。

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P

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