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AIの外部委託でできること|部門ごとに変わった時間と、委託する範囲の決め方

執筆澤 万純Activated Trigger株式会社 代表取締役
AIの外部委託でできること|部門ごとに変わった時間と、委託する範囲の決め方

契約書の作成とチェックにかかる工数が86%減った。紙の申請手続きをなくして、年間約23,000時間が浮いた。全社の事務作業が、年間78.8万時間減った。AIを業務に組み込んだ企業が公式に発表している成果には、こうした数字が並んでいます。

一方で、IPA(情報処理推進機構)の2026年の調査では、DXを進める人材が不足していると答えた企業が85.5%にのぼります。成果は見えているのに、進める人がいない。この差を埋める手段の一つが、AIの導入を外部に委託することです。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • AIを業務に組み込むと、部門ごとに何がどれだけ変わるか(公式に発表されている事例の数字)
  • その成果に、外部の力を借りて早く届くための委託の範囲の決め方
  • n8nやClaude Codeを使って、同じ仕組みを組むときの流れの例
  • 委託しても自社に残すべき仕事

経営企画、DX推進、各部門の責任者の方に向けて書いています。

AIの導入で、部門ごとに変わったこと

AIの導入で、部門ごとに変わったこと。法務の契約書の業務は86%、製造の現場の記録・集計は年約23,000時間、全社の事務作業は年78.8万時間、全社の費用は年約12億円

最初に、AIを業務に組み込んだ企業が公式に発表している成果を、部門ごとに並べます。ここで挙げる事例には、社内のチームで進めたものも、ツールを入れて進めたものも含まれます。どれも外部に委託した成果というわけではありません。外部委託は、こうした成果に早く届くための手段の一つです。

AIで変わるのは、「人が読む・写す・まとめる」作業の時間です。判断そのものではなく、判断の前にある作業が減ります。

法務: 契約書の確認にかかる時間が、半分以下になる

契約書の確認にかかる時間は、半分以下になっている。NECビジネスインテリジェンス(作成とチェックの工数)は86%、ロッテ(レビューの時間・体感)は約5割、サンワテクノス(一次レビューの読み込み)は約4割

契約書のレビューにAIを使った法務部門の事例では、確認にかかる時間が大きく減っています。

  • NECビジネスインテリジェンスは、2024年度に、契約書の作成とリーガルチェックにかかる工数を86%削減したと紹介されています。法務の業務は3名の体制で担っています。
  • ロッテの法務部は、レビューの依頼があれば必ずAIでチェックするルールを定め、レビューにかかる時間が体感で5割程度短くなったと紹介されています。
  • サンワテクノスは、一次レビューで契約書を読み込む時間を約4割減らしたと紹介されています。

3社が使ったLegalOn

LegalOnの公式サイトの画面

NECビジネスインテリジェンス、ロッテ、サンワテクノスの3社は、いずれも契約書のレビューに、LegalOn Technologiesが提供するLegalOnを使っています。契約書を読み込ませると、AIが確認すべき条項や足りない条項を示します。

出典: LegalOnの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月14日に取得)

ここから言えること: 浮いた時間は、交渉の方針づくりや事業部門への助言に回せます。少人数の法務部門ほど、効果を実感しやすい分野です。進め方は法務のAXで詳しく書いています。

製造: 現場の記録と集計の手間が、まとめて消える

現場の記録と集計の手間は、まとめて消せる。日機装は年約23,000時間、SWCCは月64時間、花王は約480時間

工場や現場では、紙の帳票への記入、パソコンへの転記、集計の作業が毎日発生しています。この作業をデジタルの仕組みに置き換えた企業が、成果を公表しています。

  • 日機装は、精密機器の事業で業務アプリを社内で作り、紙の申請手続きをほぼなくして、年間約23,000時間を削減したと紹介されています。
  • SWCCは、検査成績書を電子化し、転記と集計の作業を月64時間、紙を月6,000枚以上減らしたと紹介されています。
  • 花王は、300種類以上あった在庫管理のカードをデジタル化し、約480時間の作業を効率化したと紹介されています。

日機装が使ったkintone

kintoneの公式サイトの画面

サイボウズが提供する、プログラムを書かずに業務アプリを作れるサービスです。日機装は、紙の申請手続きを置き換えるアプリを社内で作りました。

出典: kintoneの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

SWCCが使ったi-Reporter

i-Reporterの公式サイトの画面

シムトップスが提供する、紙の帳票をそのままの見た目でタブレットに置き換えるサービスです。SWCCは、検査成績書の記入と集計に使っています。

出典: i-Reporterの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

花王が使ったPower Apps

Power Appsの公式サイトの画面

マイクロソフトが提供する、少ないプログラミングで業務アプリを作れるサービスです。花王の和歌山工場では、現場の社員がPower Appsで在庫管理のカードをアプリにしました。

出典: Power Appsの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

ここから言えること: 現場で効果が出やすいのは、件数が多く、毎回同じ手順で書き写している作業です。まず紙の帳票を数えるところから始めると、どこから手を付けるかが決まります。詳しくは工場のDXに外部人材を入れるにまとめました。

全社: 事務の時間と費用が、数字で減る

パナソニック コネクトがAI活用で削減した時間(年間)。導入後1年は18.6万時間、2024年は44.8万時間、2025年度は78.8万時間

部門を限らず、全社員が使う形で成果を出している企業もあります。

  • パナソニック コネクトは、AIの活用で削減した時間が、2025年度に78.8万時間になったと発表しています。総労働時間の3.4%にあたります。
  • 住友商事は、業務時間の削減効果を1か月あたり約1万時間、金額にして年間約12億円と公表しています。1回の操作あたりの削減時間に、操作の回数と人件費を掛けて計算しています。

パナソニック コネクトのConnectAI

パナソニック コネクトの発表ページの画面。2025年度の利用実績として、削減時間78.8万時間、利用回数361万回、1回あたりの削減時間33分、月間ユニークユーザー率61%

ConnectAIは、パナソニック コネクトが社員向けに自社で作ったAIアシスタントです。製品として販売されていないため、実績を発表したページの画面を載せています。2025年度は、1回あたり33分の削減を361万回積み重ねて、78.8万時間になりました。

出典: パナソニック コネクトの発表(2026年7月29日)の画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

住友商事が使ったMicrosoft 365 Copilot

Microsoft 365 Copilotの公式サイトの画面

マイクロソフトが提供するサービスで、WordやExcel、Teamsなど、ふだん使っているアプリの中でAIを使えるサービスです。住友商事は、2024年4月に海外グループ会社を含む約9,000人で利用を始めました。

出典: Microsoft 365 Copilotの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

ここから言えること: 全社の効果は、1人ひとりの小さな時間短縮の積み重ねです。経営会議で説明するには、住友商事のように計算の方法を決めて、毎月同じ物差しで測ることが欠かせません。

n8nやClaude Codeを使えば、同じ仕組みを自社で組める

ここまでの事例は、専用のツールを入れたり、社内で業務アプリを作ったりして成果を出しています。同じ考え方の仕組みは、n8nやClaude Codeを使えば、自社の業務に合わせて組むこともできます。

n8n

n8nの公式サイトの画面

業務の流れ(ワークフロー)とAIの処理を、画面上で部品をつないで組み立てるツールです。公式サイトによると、500以上のサービスとつなげられ、自社のサーバーに置いて使うこともできます。メールやフォームの受け付け、AIへの問い合わせ、SlackやTeamsへの通知、表への書き込みを1つの流れにまとめられます。

出典: n8nの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

Claude Code

Claude Codeの公式サイトの画面

Anthropicが提供する、AIがプログラムを書くツールです。やりたいことを言葉で伝えると、プログラムを書いて動かし、直すところまで進めます。公式サイトによると、ターミナル、IDE、Slack、ウェブから指示でき、macOS、Linux、Windowsで使えます。

出典: Claude Codeの公式サイトの画面の一部を切り抜き(2026年10月15日に取得)

例1: 契約書の一次チェックをn8nで組む

例1: 契約書の一次チェック(n8n)。受け付ける、文章を取り出す、AIが一次チェックする、担当者に知らせる、法務の担当者が判断する

法務の事例と同じく、AIが担うのは判断の前の読み込みです。ひな形と審査の基準を最初にAIに渡しておくと、自社の基準に沿った指摘が返ってきます。最後の判断は、これまでどおり法務の担当者が行います。

例2: 紙の帳票の転記と集計をn8nで組む

例2: 紙の帳票の転記と集計(n8n)。現場で記録する、AIが読み取る、自信の低い項目だけ人が見る、表に書き込む、集計して届ける

製造の事例で減ったのは、書き写す時間と集計の時間です。紙の帳票を残したままでも、撮った写真をAIに読ませれば、転記の作業を減らせます。読み取りに自信のない項目だけを人が見る形にすると、確認の手間が増えすぎません。

例3: 部門の定型作業をClaude Codeで仕組みにする

例3: 定型作業を仕組みにする(Claude Code)。作業を言葉で頼む、Claude Codeが作る、試して直す、決まった時刻に動かす、効果を記録する

全社の事例は、1人ひとりの小さな時間短縮の積み重ねでした。毎週同じ手順で行う集計や報告は、Claude Codeに言葉で頼めば、プログラムやn8nの流れとして形にできます。作った仕組みは、n8nやサーバーで決まった時刻に動かします。

ツールは手段で、先に決めるのは「どの作業の、何の数字を減らすか」です。どの例でも、AIに渡してよい情報の範囲と、人が最後に確かめる箇所を、作る前に決めておきます。社外のAIに契約書を読ませるときの考え方は、法務のAXで説明しています。

ここから言えること: n8nやClaude Codeを使えば、専用のツールがない業務でも仕組みを作れます。ただし、業務を選び、流れを設計し、現場に定着させる作業は、ツールでは代わりになりません。外部に委託する価値が大きいのは、この部分です。

外部に委託すると、何が早くなるか

ここまでの成果に届くまでに、各社はいくつかの段階を踏んでいます。業務の流れを資料にする、AIに任せる工程を決める、仕組みを作って試す、効果を測って広げる、という段階です。全体の流れはAXの進め方で説明しています。

外部に委託すると早くなるのは、社内に経験者がいない段階です。

  • 業務の流れの資料化: 現場の聞き取りと、業務フロー図・業務量の一覧づくり
  • 仕組みづくり: AIに任せる工程の設計、ツールの選定、n8nなどでの流れの組み立て、試験運用
  • 効果の測定: 開始前の数字の取り方と、毎月の測り方の設計
  • 推進の支え: 部門をまたぐ調整と、経営層への報告

外部に委託するのは「作る・整える・定着させる」部分で、成果の中身を決めるのは自社です。

委託する範囲の決め方

外部に委託する範囲の決め方。成果の数字を先に決める、自社に残す仕事を決める、委託するのは作る・整える・定着させる部分、引き継ぐ人を最初に決める

委託の範囲は、次の順番で決めると迷いません。

  1. 成果の数字を先に決める。 「契約書の確認を半分の時間に」「紙の帳票の転記をなくす」のように、変えたい数字を決めます。
  2. 自社に残す仕事を決める。 判断、承認、取引先とのやりとりは、自社に残します。
  3. 委託するのは、作る・整える・定着させる部分にする。 業務フローの資料化、仕組みづくり、試験運用、効果の測定です。
  4. 引き継ぐ人を最初に決める。 委託が終わった後に運用する社内の担当者です。

ここから言えること: 「AIを入れたい」から始めると、委託の範囲が決まりません。「何の数字を変えたいか」から始めると、必要な人と期間が自然に決まります。

誰に委託するか

委託の相手は、大きく3つです。

  • ツールの提供会社: ツールの導入と使い方の支援に強みがあります。業務の流れの見直しは、自社でまとめる必要があります。
  • コンサルティング会社: 複数の部門をまとめて見直す大きな取り組みに向いています。
  • フリーコンサルタント: 業務の資料化、推進の支え、効果の測定など、必要な役割だけを、必要な期間と稼働率で迎えられます。1人・1か月から契約できます。

PERSONAに掲載している募集のうち、題名にAIを含むものは100件あります(2026年10月15日時点)。役割で分けると、企画・推進・PMO・業務改革が50件、開発・構築などのエンジニアが33件でした。AIの導入では、作る人と同じかそれ以上に、業務を選んで関係者を動かす人が求められています。

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最初の一歩

変えたい数字が決まっていない段階では、まず業務を棚卸しして、減らせる時間を見積もるのが早道です。

参考にした公式情報

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この記事の執筆者

澤

澤 万純Activated Trigger株式会社 代表取締役

九州大学 経済学部 卒業後、デロイト トーマツ コンサルティングに入社。大手企業の業務改革・BPR・DX支援に約5年間従事。2019年7月にActivated Trigger株式会社を設立し、代表取締役に就任。フリーコンサル案件紹介プラットフォームPERSONAを企画・開発・運営している。

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