案件獲得に向けたエージェント視点の評価ポイントとは

フリーランスのコンサルタントとして案件を獲得する際、多くの方がまず利用を検討するのが「エージェント」の存在です。案件とのマッチングを行い、プロジェクト参画までをサポートしてくれるパートナーとして、フリーコンサルにとってエージェントの存在は非常に重要です。
では、実際にフリーコンサルがエージェントを通じて案件を探す際、どのような点をアピールすべきなのか。また、エージェントはコンサルタントのどこを見て評価しているのか。本記事では、その具体的なポイントを、実際の現場感に基づいて解説していきます。
1.在籍していたコンサルティングファーム

まず最初にエージェントが確認するのは、在籍していたコンサルティングファームの種類やブランドです。これは、即戦力としての信頼性や、案件におけるポジショニングを図るうえで非常に重要なファクターとなります。
具体的には、アビームやアクセンチュアといったIT系大手ファーム、デロイトやEYなどのビッグ4、ベイカレントのような総合系ファーム、そしてMBB(マッキンゼー・BCG・ベイン)やATカーニーといった戦略系ファーム出身であるかなど、ファームの種類によって評価の軸がある程度形成されているのが現実です。
もちろんファーム名だけで全てが決まるわけではありませんが、どのようなレベルのプロジェクトに関与してきたのかを推し量る際の、ひとつの有力な指標になっていることは間違いありません。
主なコンサルティングファーム(戦略系)
日本語名 | 英語名 | 概要 |
マッキンゼー・アンド・カンパニー | McKinsey & Company | 1926年創設。論理的問題解決法の確立で知られるトップファーム。 |
ベイン・アンド・カンパニー | Bain & Company | 1973年設立。「具体的に目に見える成果を出す」ことを目指す文化。 |
ボストン コンサルティング グループ | The Boston Consulting Group | 1963年設立。経営者・大学教授を輩出する人材育成力にも強み。 |
アーサー・ディ・リトル | Arthur D. Little | 1886年設立。世界最初の経営コンサルティングファーム。MOT(技術経営)の先駆け。 |
A.T. カーニー | A.T. Kearney | 1926年創立。戦略からITまで一貫したサービスを提供するグローバルファーム。 |
アクセンチュア(戦略グループ) | Accenture | 世界最大規模の従業員数を誇る経営コンサルティングファーム。世界中の様々な分野・産業に対しコンサルティングを提供。 |
PwCコンサルティング(Strategy&) | PwC Strategy& | 1914年創業。競争優位の創出を支援する世界的ファーム。 |
コーポレイト ディレクション | Corporate Directions, Inc. | 1986年設立。BCG出身者により設立された日本初の戦略系コンサル。 |
モニターデロイト | Monitor Deloitte | モニターグループ日本オフィスは2012年に撤退。 |
ドリームインキュベータ | Dream Incubator Inc. | 元BCG幹部が創業。「次世代のソニー・ホンダを100社創る」が理念。 |
ローランド・ベルガー | Roland Berger | ヨーロッパ代表の戦略ファーム。幅広い業界で実績。 |
P&Eディレクションズ | P&E Directions | 2001年設立。BCG出身者による急成長中の戦略・事業支援ファーム。 |
主なコンサルティングファーム(総合系)
日本語名 | 英語名 | 概要 |
アクセンチュア | Accenture | 世界55カ国で事業展開。5領域で広範なコンサルティングサービスを提供。 |
デロイトトーマツコンサルティング | Deloitte Tohmatsu Consulting | 日本におけるマネジメントコンサルティングのリーディングファーム。Deloitteグループの一員。 |
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC) | EY Strategy and Consulting | EYのグローバルネットワークを活かしたコンサルティング。 |
PwCコンサルティング | PwC Consulting | Big4の一角。経営戦略から実行まで国内最大規模の体制で支援。 |
KPMGコンサルティング | KPMG Consulting | 事業変革・テクノロジー・リスクの3分野に特化したサービス。 |
ベイカレント・コンサルティング | BayCurrent Consulting | 戦略~IT~アウトソーシングまで幅広く展開。戦略系人材の増強中。 |
アビームコンサルティング | ABeam Consulting | 日本発。アジア中心にグローバルサービスを展開。 |
日本IBM | IBM Japan | ビジネスコンサル~業務アウトソーシングまで包括的に提供。 |
クニエ(QUNIE) | QUNIE Corporation | NTTグループの一員。日本の発展に貢献する業務コンサルを展開。 |
日立コンサルティング | Hitachi Consulting | 日立グループの技術力と実行力を活かした実効性の高い支援。 |
シグマクシス | Sigmaxyz | 2008年創業。協業型での価値創出を重視したコンサルティング。 |
リッジラインズ | Ridgelinez | 富士通が設立したDX推進に特化した新興コンサルティング会社。 |
2.在籍年数と継続性

次に見られるポイントは、コンサルティングファームでの在籍年数です。
日本の転職市場において「ジョブホッパー」は一定のリスクと見なされることがありますが、これはフリーコンサル市場においても同様です。エージェント側としては、短期間でプロジェクトから離脱してしまう可能性がないか、または継続的に価値を出せる人物かどうかを慎重に見極めようとします。
例えば、どれだけ優れた経験を持っていたとしても、毎回の在籍期間が数ヶ月で終わっていると、「何か問題があって長続きしないのでは?」という疑念を持たれてしまう可能性もあります。
3.プロジェクトごとの稼働期間

在籍年数とあわせて注視されるのが、プロジェクトごとの稼働期間です。
戦略系の案件であれば、2〜3ヶ月で完了する短期プロジェクトも多い一方、IT系プロジェクトでは1年近く続くことも珍しくありません。そうした中で、IT系にもかかわらず3ヶ月程度で次々とプロジェクトが終了している場合、「現場で価値が出せなかったのでは?」と疑われるリスクも出てきます。
もちろん個別の事情によってケースバイケースであることは理解されていますが、一定の傾向として、「どれだけの期間、現場に貢献し続けられたか」は明確な評価ポイントとなります。
4.プロジェクト内でのロール・対応範囲

どのようなプロジェクトに関わってきたかだけでなく、その中で担っていたロールも極めて重要です。
例えば、リサーチ支援やPMOアシスタントのような補助的役割と、プロジェクトマネージャーやクライアント折衝担当では、同じ案件でも評価が大きく異なります。エージェントは、「この人が入ったら何ができるのか」をイメージしながらマッチングを進めるため、自らの役割・担当範囲を明確に説明できることが不可欠です。
5.解決してきた課題と成果

これまでのプロジェクトで、どのような課題に向き合い、どのような成果を上げてきたのか。これはすべての候補者に共通して求められるアピールポイントです。
具体的には、「どのような業務プロセスを改善したか」「どのような施策を提案し、どのようなKPIが改善したか」など、成果とプロセスの両面を語れることが求められます。単なる作業内容の羅列ではなく、自分がそのプロジェクトの中でどんなバリューを出したのかをしっかりと伝える必要があります。
6.英語力の有無

英語力も、プロジェクトによっては大きな評価ポイントになります。
グローバル案件であれば当然のこと、国内案件であっても、クライアントが外資系である場合や英語の資料を読む機会がある場合も少なくありません。流暢に話せる必要はありませんが、英語に抵抗がないことを示せると、それだけでアサイン可能性が広がります。
7.稼働率と働き方の柔軟性

案件によって求められる稼働率は異なります。戦略系案件では50%稼働が可能な場合もありますが、IT系や業務改善系ではフル稼働(100%)が求められることが多いです。
したがって、「どの程度稼働できるのか」を明確に伝えることは、エージェントにとって重要な判断材料になります。また、フルリモート可能なプロジェクトも増えてきたとはいえ、出社が前提となる案件も依然として多いため、常駐可否についてもあらかじめ明示しておくべきでしょう。
8.報酬レンジの妥当性

報酬に関しては、市場相場がある程度形成されており、出身ファーム、経験年数、ポジションなどから概ねの妥当レンジが判断されます。
その中で、著しく高い報酬を提示してしまうと、プロジェクトマッチングが難しくなる可能性があります。逆に安すぎると、相応の経験やスキルがないのでは?と見られる場合もあるため、自らの市場価値を把握し、適正な金額帯で提示することが望ましいです。
9.スペシャリティ・専門性の明確さ

やはり評価されやすいのは、特定領域における専門性が際立っているコンサルタントです。
「なんでも屋」的な立ち回りができることも悪くはありませんが、エージェントから見ると、どの案件に紹介すべきかの判断が難しくなるため、専門分野や強みを明確にしている方が有利になります。業界、テーマ、機能(戦略/業務/ITなど)のいずれかでエッジが立っていることがポイントです。
10.人間性と社会性

最後に、そして最も重要なのが人間性・社会性です。
エージェントとしては、プロジェクト参画後も問題なくクライアントと信頼関係を築いていけるかどうかを重視しています。特に初回の面談時には、「画面をオフにしている」「マスクをつけたまま話している」「明らかに屋外から参加している」といった印象面でのマイナス要素があると、それだけで懸念が生じます。
ただし、逆に言えば、通常のビジネスの場で問題なく振る舞える方であれば、特段意識しなくても高く評価されることが多いとも言えます。
まとめ:総合的な判断軸を意識し、自分の強みを可視化する

ここまで、エージェントがフリーコンサルを評価する際の主要なポイントを10項目にわたってご紹介してきました。
まとめると、フリーコンサルに求められるのは、
- どのような場でどのようなバリューを出せるか
- どのような働き方が可能か
- そして報酬が希望とマッチしているか
といった観点での総合的なマッチ度です。
これから独立を考えている方、あるいは新たな案件を探しているフリーコンサルの方にとって、本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。エージェントとの対話の際には、今回ご紹介した各観点を意識して、自らの価値をしっかりと伝えていきましょう。