フリーランスのITコンサルを目指される方が増えています。フリーランスのITコンサルは、自分の得意分野の仕事を選んで、自由度高く働くことができる魅力はあるものの、仕事の獲得は顧客のキーパーソンなどとのコネクションによるところが多く、個人と直接契約をしない企業もあり、実際には仕事の獲得に苦労されるケースもあります。また、個人であるため、顧客に対して立場が弱くなり苦労されている方も多いのが実情です。
そこで、今回の記事では、SIerやコンサルティングファーム勤務のITコンサルがフリーランスになるメリットとデメリットをまとめたうえで、フリーランスのITコンサルとして働くうえで気を付けるべきふるまい方、および、求められるスキルについて解説します。
ITコンサルが会社勤務からフリーランスになった際のよくあるメリット
①自分の得意分野で働けること
第一は、自分の得意分野で働けることです。SIerやコンサルティングファームでは、会社として仕事を獲得して、それを社員に割り振っていくので、時には得意でない分野のプロジェクトにアサインされることがあります。しかし、フリーランスになると、仕事を受けるか受けないかは自分で決められます。ノウハウも経験も十分でない分野の仕事のオファーを受けた場合、期待通りの成果を出せる見込みが薄ければ、受けなければよいのです。
②目の前の仕事と顧客だけに集中できる
第二は、目の前の仕事と顧客だけに集中できて、上司や会社のしがらみを感じずに余計なストレスを感じないで済むことです。SIerやコンサルティングファームに勤務していれば、顧客に満足してもらうことだけを考えているわけにはいきません。例えば、自社の上司の顔色をうかがい、自社にとってのプロジェクトの採算を考えなければなりません。顧客にとって最善の解決策が、自社が引き続いて仕事を受注する支障になることもあり、利益相反に悩むこともあります。ところが、フリーランスになれば、顧客の利益だけを考えていればよくなります。ITによって顧客の課題を解決するという、ITコンサルの原点に立って仕事ができるチャンスが高まります。
③SIerやコンサルティングファームより低い単価で仕事を受注することで顧客満足度をあげることができる
第三は、SIerやコンサルティングファームより低い単価で仕事を受注できることです。これらの会社が顧客に提示するITコンサルやSEの単価には、会社のオーバーヘッドコストが乗せられています。会社の総務、経理、人事など共通部門費などです。
一方、フリーランスのITコンサルは、基本的に自分自身の人件費だけを顧客に提示できます。そして、同じ仕事をして同じ結果を出しても、単価が低いほど評価が高くなります。なぜならば、仕事の評価は、仕事の質だけではなく、顧客が事前に認識していた期待との比較で決まるからです。ITコンサルの単価は顧客の期待を決める最大の要因であり、単価が低い分、顧客の評価ひいては満足度を高くできます。
④個人的な都合に合わせて働くことができる
第四に、フリーランスとして実績を積めば、個人的な都合に合わせて働くこともできます。例えば、長期の旅行をしたい時には仕事を入れないでおくといったことです。
ITコンサルが会社勤務からフリーランスになった際のよくあるデメリット
①仕事の獲得・営業の難しさ
SIerやコンサルティングファームから独立したITコンサルの多くが味わう苦労として、まず仕事の獲得の難しさが挙げられます。
在職時の顧客から独立後も仕事を受注できる幸運に恵まれたITコンサルはごくわずかかと思います。多くのフリーランスのITコンサルが顧客を開拓するにあたって壁になるのは、多くの企業、とりわけ大企業が個人との直接取引を社内規定で禁止している点です。そこで、SIerやコンサルティング会社の下請けになったり、エージェントを利用することになるわけです。
フリーランスの稼働は安定せず、生活が不安定になりかねないと言われることがありますが、これはITコンサルにもそのままあてはまります。最近ではフリーランスのITコンサルが増えているので、受注競争は激しくなるばかりです。さらに新たなライバルも出現しようとしています。それは副業人材です。社員に副業を認める企業は増えつつあり、給与所得がある分、単価を低く設定でき、著名企業に勤務していればフリーランスにはない信用も得られますので、短時間稼働のプロジェクトを取るにあたっては、フリーランスのITコンサルは劣勢を強いられます。
ITコンサルに求められるスキルの変化
ITコンサルとしての基本的なスキルは備わっているとして、会社勤務からフリーランスになることで新たに必要となるスキルがいくつかあります。
①プロジェクトを行いながら同時並行で営業するマルチスキル
まず、プロジェクトを行いながら営業するスキルです。SIerやコンサルティング会社では、プロジェクトメンバーとなるITコンサルとは別に、仕事を獲得する営業担当者がいます。ITコンサルと営業担当者の仕事内容は異なり、必要とされるノウハウも異なります。フリーランスになると、このプロジェクトのデリバリーと営業活動の2つを一人で同時に行う必要があります。自分が参画しているプロジェクトの中で、自分が次に関われる仕事の芽を見つけて、提案につなげるということです。また、顧客の中で案件を持っていそうなキーパーソンを見つけて、その人物とのコネクションをつけるといったことです。
②自分を売るためのコミュニケーション能力
次に、自分を売るためのコミュニケーション能力です。会社勤務時は会社のネームバリューで仕事ができますが、フリーランスになると、顧客にどうやって自分の話を信じてもらえるかが勝負です。
そのために最も必要なのはITコンサルとしての実績ですが、信頼に足りるITコンサルを自己演出するスキルも大切です。それは、顧客の知らない理論、ノウハウ、過去の成功事例などを披露して、自分の存在を大きく見せることではなく、プロジェクトにおいて丁寧なコミュニケーションを積み重ねることです。顧客の言うことがどんなに的外れであっても、論理的に成り立たなくとも、真摯に受け止めて、顧客に不快な思いをさせることなく、議論を正しい方向に導いていくのです。これは個人のキャラクターによるものではなく、学んで身につけることができるスキルです。こうして得た信頼のうえに実績をあげて評判が上がると、その評判が次の仕事の受注につながります。
フリーランスになったITコンサルが気を付けるべきこと
①自分の色を出すこと
第一に、自分の色を出すことです。ITコンサルとして得意分野が何なのか、顧客にどのような価値を提供できるのかを明確にし、それをアピールしなければなりません。上手なセルフプロモーションが必要ということです。組織に所属していれば、得意分野は明確であっても、人繰りの都合で、得意でない分野のプロジェクトにもアサインされることがあります。得意でないプロジェクトにおいても全力で取り組んで成果を出すと、徐々に自分の色は薄れていきますが、組織内の評価が下がることは稀で、プロジェクトへのアサインが途切れる心配はありません。しかし、フリーランスのITコンサルとしては、「何でも屋」と見なされるのは禁物です。フリーランスのITコンサルへの仕事の依頼は、依頼内容を狭く限定してなされる場合が多いからです。例えば、「流通業のIT戦略立案ができる人材」ではなく「ITを活用したロジスティックスの効率化ができる人材」、「データベースの専門家」ではなく「Oracleを使った統合DB構築ができる人」といったことです。専門分野が曖昧なITコンサルはアサインの候補から漏れたり、運良く受注できても単価が低かったりすることがあります。
(参考)「ITに係る仕事」をしていればフリーランスのITコンサルとして活動できる
「コンサルティング」の元々の意味は「専門的な知識・経験を活かして、顧客の相談にのったり指導したりすること」で、ITコンサルは顧客の経営課題をITによって解決します。実務上および世の中一般の認識では、境界線は曖昧ながら、ITシステムを開発・導入することで企業を支援するSEとは区別されています。ところが、フリーランスのITコンサルにはこの区別がなく、ITに係るありとあらゆる仕事をしています。
顧客に対して「・・・・・してください」と指導するだけのITコンサルもいれば、顧客の困りごとをきいてすぐに、ITシステムを作り上げて解決してしまうITコンサルもいます。昔からあるウォーターフォール型ではなく、アジャイル型の開発が多いウェブ系では、このタイプのITコンサルが増えており、もはやSEと区別がつきません。さらに、最新のIT技術の調査をしているITコンサル、顧客の内部監査部門とともにシステム監査を行っているITコンサル、企業の情報セキュリティ対策に特化しているITコンサルもいます。
ITコンサルには定型的な仕事がないだけでなく、フリーランスでITに関係した仕事をしていれば誰でもITコンサルを名乗れるのが現状で、オポチュニティが急増しています。
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